FC2ブログ

Pとこの一冊 第5回 ハバネロP「ARIA/天野こずえ」

初めましての方は初めまして、そうではないかたはこんにちは。ハバネロPです。
初めましての方向けに軽く自己紹介をさせて頂きますと、08年の1月にニコマスデビューして以来、疑似m@sや手描きイラストを用いた紙芝居PVをメインに色々な動画を作っています。
……というわけで、よろしくお願いします。


今回「Pとこの一冊」で私が選ばせてもらったのは、天野こずえによる漫画作品『ARIA』です。
No5 ハバネロP用
僕は小さい頃から本が好きで、小説、漫画などジャンルを問わず色々読み漁って来ました。
そんな中で、最も僕に影響を与えた作品がこの『ARIA』になります。


まずは、この作品についてかるく概略を説明するところから始めたいと思います。
この作品は、マッグガーデンから発刊されている雑誌「コミックブレイド」に2001年から2008年まで連載されていました。単行本は全12巻が発売されています。
また、その前日譚が『AQUA』というタイトルで単行本2巻にまとめられています。
本稿では、『AQUA』『ARIA』両方を一つのシリーズとして紹介して行きたいと思います。
(なんで2タイトルあるのかについては、「マッグガーデンお家騒動」で調べると分かるかと思います)

舞台となるのは、テラフォーミングが完了した2300年代の火星。
その過程でゴキブリ怪人との壮絶な戦いがあったかどうかは知りませんが、作中では火星のテラフォーミングは無事に成功し、水の惑星「アクア」と呼ばれるようになっています。
そんなアクアの入植地のひとつが、地球のヴェネツィアを町並みや風習まるごと移植した街ネオ・ヴェネツィアです。
ヴェネツィアと言えばゴンドラによる観光案内が有名ですが、ネオ・ヴェネツィアにもそれは引き継がれています。ただし、実際のヴェネツィアでは男性が観光案内を務めるのに対し、ネオ・ヴェネツィアでは「水先案内人(ウンディーネ)」と呼ばれる女性たちがこの業務に携わっています。
本作は、そんな水先案内人を目指す少女・水無灯里を主人公に、ネオ・ヴェネツィアの四季折々の行事やちょっとした日常のできごとの中における、少女の心の動きや成長を丁寧に描いた作品です。アニメ化もされており、3シーズンに渡って全52話が製作されました。


僕がこの作品に出会ったのは、アニメ第二期にあたる『ARIA the NATURAL』をたまたま見たことがきっかけでした。そしてその出会いはそもそも、全くの偶然によるものでした。ある日高校から帰って、録画しておいたアニメを見た後、そのままビデオテープを流しっぱなしにしていたら別のアニメが始まりました。それをなんとなく見ている内に、「あれ、この雰囲気結構好きかも……?」と思い始め、本編が終わる頃には「いい話だった……」とすっかりご満悦。そのアニメこそが『ARIA』だったのです。
(ちなみに録画されていたのは母の仕業だったと後に判明しました)
そして、アニメを見るのが週に一度の楽しみになり、原作漫画があると知って購入し、アニメと連動して放送されていたラジオの方も聞き始め、サントラを購入し……と、完全にその世界の虜になっていました。
周りにこの作品を知っている人が全く居なかったため、ネットの海を彷徨ってARIAファンの交流サイトを見つけ、そこでチャットしたりするのも当時のひそかな楽しみでした。
一つの作品にどっぷりとハマり、そしてそれによって誰かと繋がれる、という経験を与えてくれたことは僕にとって大きな意味を持っていると言えます。


そうした個人的な体験にまつわる思い入れも勿論大きいのですが、何よりも作品そのものが素晴らしかったことと、そこから自分自身の考え方に与えられた影響の大きさ、というのがこの作品を今回紹介した主な理由になるでしょう。

先程も述べた様に、この物語の中で大きな事件は全くといっていいほど起きません。
ネオ・ヴェネツィアの様々な行事や、水先案内人としての仕事の中で出会う人々、あるいは共に水先案内人として頑張る友人や先輩達、そして何よりも穏やかに過ぎていく日常の中で起こるちょっとした出来事。
そういった色々なものが、成長していく主人公・灯里の目を通して映し出されると、何だかとても素敵なものに見えてくるのです。
この作品を初めて読んだ頃、僕は受験勉強に追いかけられる日々を過ごしており、毎日しんどいことばっかりだなーと思っていました(今思うとなんて甘ったるいことを考えてたんだって感じですが……)。
でも、この作品に出会ったことで、少しだけ考えが変わったと思います。
日々しんどいことも沢山あるけれど、気づかないだけで素敵なことも沢山隠れているんじゃないだろうか。
むしろ辛いこともしんどいことも、楽しいことを引き立ててくれる存在なんじゃないか。
そう思えるようになったのは、僕がこの作品から貰った大きな財産のひとつだと思います。


「普段は気づかないけれど、日常の中に素敵なものが沢山ある」
「そしてその日々を、今を楽しむこと」
この二つのテーマこそが、『ARIA』という作品の柱として存在していると僕は思うのです。
それをがっちりと支えているのが、繊細で美しい情景描写と、キャラクターの魅力であると思います。

前者については、実際にコミックスを手にとって体験してほしいところ。
ネオ・ヴェネツィアの街の風景の克明な描き込みと、四季の移ろいを描いた背景描写。
そして、見る者の感情をもぐいぐい揺さぶってくるキャラクターの表情。
そのふたつによって、まるで読んでいる僕らも実際にネオ・ヴェネツィアの街で、登場人物たちと同じ物を見ているような感覚が味わえます。
特に、各話にほぼ必ず入っている見開きの大ゴマはこの作品の真骨頂と言うべきでしょう。まるで美しい一枚の絵画のような迫力に圧倒され、あたたかな感動を見るものの心に呼び起こしてくれること請け合いです。
あとネオ・ヴェネツィアの色々な年中行事がどれもこれも楽しそうなんですよね。
作中で描かれる行事は現実のヴェネツィアでも実際に行われているものなので、是非一度でいいから実際に街を訪れて生で見てみたい、というのは僕の長年の夢であったりします。

後者については、キャラクターのビジュアルもさることながらその心情描写の上手さが光ります。
これに関しては、作者の技倆による部分が非常に大きいと思います。
『ARIA』にハマって以降、天野こずえの漫画は絶版になっているもの以外は全部読み漁ったんですが、どの作品を見ても、表情のみならずアングルや背景描写まで含めた「感情の表現」が凄く良いんです。
喜怒哀楽は勿論、微妙な感情をもきっちりと拾い上げて絵にしてくれる。だからキャラクターに思いっきり感情移入が出来る、そういう作品づくりをされているのだと思います。

そんな感情描写を補強してくれるのがセリフ回しの上手さ。
『ARIA』という作品は、名言を集めるだけで一冊の本が出来るくらいだったりします。
名言といっても「剣を握ったままではお前を抱きしめられない」的なオサレなものではなく、まっすぐな感情を素朴かつ純粋に切り取った言葉で書かれているものばかりです。
だからこそ言葉が、心にストンと落ちてじんわりと沁みこんで来るんですよね。

「何回転がしても その度にどこからともなく現れて 
一緒になって楽しそうに雪だるまを大きくしてくれるの
……子供の頃気がついたんだけどね

その時ふと思ったのよ こんな大人になりたいな――ってね」

そんな数ある名言の中でも、お気に入りといえばこれでしょうか。
主人公である灯里の先輩に当たる、アリシア・フローレンスの台詞です。
作中でも屈指の名言メーカーであり、その穏やかな物腰、水先案内人の仕事に対するプロフェッショナルな態度、なによりも身の周りの森羅万象を優しく素直な態度で受け取るその姿に、作中のみならずファンからもさん付けで「アリシアさん」と呼ばれてしまうそんなキャラクター。
僕もアリシアさんの在り方、生き方からは多大な影響を受けました。
僕が『ARIA』から受けた影響の何割かは、アリシアさんの存在なくしては無かったのではないでしょうか。

上に挙げた台詞は、そんな中でも特に個人的に印象深いものです。
この言葉に触れて数年が経ちましたが、僕は果たしてそんな大人になれているのでしょうか?
少なくとも、誰かが楽しそうなことしてたらとりあえず何か手伝ってみようか、という精神は培われたように思います。
現に今も、「なんか面白そうな企画あるから僕も参加してみよう」と思ってこの原稿を書いている訳ですからw
そもそもニコマスPになったきっかけも、そんな理由でしたっけか。
なんだかんだで、この作品から貰ったものはちゃんと僕自身の中で息づいているみたいです。


最後にもう一つ。
そういった部分もさることながら、『ARIA』という作品が最も評価されるべきところは「ひとが日々の中で成長、変化していく」という姿を真っ向から描いていることにあると思います。
この作品は、女の子をメインに日常の風景を描く、所謂「日常系作品」に大別されます。
そうした作品について、「成長のない箱庭空間」であるという批判が寄せられることがしばしば起こります。
あるいは逆に、「変化」によってゆるやかに動いていた物語が急展開を見せることに対しても批判的な意見が投げつけられることも起こり得ます。
『ARIA』もその例外ではなく、作品の完結とそれに向かう展開については、ファンの間でも様々な意見が飛び交いました。
しかし、それに対する僕のスタンスは当時も今も変わりません。
日常を描くのであれば、そこで起こる成長や変化を避けて通ることは出来ないのだと思います。
変わらない穏やかな日々、いつもの仲間がいる風景。そうしたものが、永遠に続くことはありません。
だからこそ、そうしたものがある「今」が大切なのだということを最後まで貫いて物語を描ききったことが、この作品の素晴らしさをより高めていると、そう思います。

そんな『ARIA』という作品のテーマそのものを表す台詞を紹介して、この原稿を締めたいと思います。

「今――楽しいと思えることは 今が一番楽しめるのよ
だから いずれは変わっていく今を
この素敵な時間を 大切に ね」 

長い長い文章に最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました。
これをきっかけに、ページの向こうにあるネオ・ヴェネツィアの街を訪れる人が少しでも増えますように。

----------------------------------------------------------------------

Author:ハバネロP

動画倉庫“幅音露堂”(公開マイリスト): http://www.nicovideo.jp/mylist/3683867

Twitter @habaneroP

----------------------------------------------------------------------
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

真人間P

Author:真人間P
「Pとこの一冊」寄稿者募集中
開催期間 4/19~5/25
詳しくは、「寄稿について」参照。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR