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Pとこの一冊 第9回 朗読P「二十億光年の孤独 / 谷川俊太郎」

No9 朗読P用

Book: 二十億光年の孤独 / 谷川俊太郎

「二十億光年の孤独」は、今や日本を代表する詩人である谷川俊太郎さんが最初期に書いた詩を集めた処女詩集です。この本の初版が刊行されたのは1952年であり、今から60年以上も前になってしまいますが、そこには10代後半の思春期から20歳頃までの作者の澄んだ感性と鮮烈な感情による詩が爽やかに綴られています。

中でも特に好きなのが、次の「かなしみ」という詩です。


かなしみ


あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまつたらしい

透明な過去の駅で
遺失物係の前に立つたら
僕は余計に悲しくなつてしまつた




この詩を初めて読んだのは、ちょうど高校1年の頃でした。ごく短い詩なのですが、当時の私にはとても心動かされるものがありました。私たちが何となく思春期のときに抱く、言葉で表現しがたいもやもやとした感情のようなものを、空と波(水)、透明、おとし物と遺失物係という事象と形容をもって、くっきりと描き出しているその様に、深く感動したのでした。

振り返って、ふとアイマスについても時折考えることがあります。ドキュメンタリー風の動画を作っている性分ゆえなのかもしれませんが、あれらの動画で彼女たちの「人間らしさ」を描くのはなんと難しいことか、と。

千早のように原作内で明確なバックグラウンドが用意されたもの、あるいは伊織が家族に対して抱く反発、というような箇所を除けば、基本的に彼女たちはほとんど「善良」で「明るく」「快活」に、有り体に言えば「いい子」として登場し、行動します。ドキュメンタリーも、それをなぞれば「いい話」でまとまります。でも、本当にそれだけが彼女たちの中身なのでしょうか。それは違うと、私は思います。

さきほどの詩のように、何か特別な理由がなくとも人はふいにかなしくなったり、何に悩んでいるのかすらもわからず悶々と悩んだりします。そして、そういう瞬間は、彼女たちにもきっとあると思うのです。

ただ、それを汲み取るには彼女たちとのコミュニケーションはあまりにも前向きで、幸福に満ちてしまっています。パーフェクトとされるものを選んでいる限りでは、苦悩や陰り、そういった表情や言葉に出会うシーンはそう多くありません。そのため、私の動画では補足としていつもプロデューサーに長々とインタビューに応じてもらっています。前提知識があれば話は別ですが、番組という体をとっている以上、そのような側面を一切語らないというのは視聴者に不誠実だと思うからです。またそれは、彼女たちを偶像としてではなく、あくまで一人の人間として捉えたいという願いゆえでもあります。

さて、話が脱線しましたが最後に詩集の表題作である「二十億光年の孤独」を引用して終わりたいと思います。


二十億光年の孤独


人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした



アイマスは、完璧なゲームではありません。完璧なコンテンツでもありません。ですが、その不完全さがあるからこそ私たちはそれに惹かれ、あれこれ考え、集っては離れ、そしてまた集っては今日もわいわいと騒いでいます。

その切なくも素晴らしい時間に、これからもささやかながら関わっていこうと思います。では、またどこかで。

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Author:朗読P

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