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Pとこの一冊 第12回 グリグリP「時計館の殺人/綾辻行人」

今回、私グリグリがピッ冊にて紹介させていただくのは、
第45回日本推理作家協会賞を受賞した作品、綾辻行人氏の「時計館の殺人」です。

No12 グリグリP用


~鎌倉の森の奥深くに佇む、内部を百八もの時計によって埋め尽くされた不気味な館「時計館」。
 そこでは、十年前のある事件を皮切りに多くの人々が命を落とした。
 時が経ち、心霊スポットと化したその館へと足を運ぶ若者達に殺人鬼の魔の手が迫る。~

...といった内容の、いわゆる「吹雪の山荘」系のミステリー小説です。
この手の小説はなかなかに古典的ですが、綾辻氏はデビュー作「十角館の殺人」で鮮烈デビューを飾っており、日本ミステリー界へのその多大な影響力から「新本格ミステリー作家」とも言われております。
「鮮烈なデビュー」「ニコマスダンスPVへの影響力」「本格というより新本格」
こうやって要素を羅列すると僕がニコマスにはまるきっかけになったPとイメージが近いですね。
誰かって?ググればすぐに分かりますよ!ww

話を戻しましょう。

この小説(といっても綾辻氏のミステリー小説全般に言えることですが)のおもしろいところは、巻頭に登場人物の一覧および時計館の見取り図があることです。
話を読み進めながら、「この人物はどういう人だったっけ」とか、「今主人公が歩いているのはどこなのか」といったことを手軽に確認することができます。
そうすることによって、より没入感のあるミステリー体験をすることができます。

そして、僕が「時計館の殺人」を特におすすめする理由は、なによりそのトリックです。
緻密に張り巡らされた数多の伏線がドミノ倒しのように解決していくクライマックスの爽快感は、数ある綾辻ミステリーの中でもトップレベルだと思います。
「あぁこれも伏線だったのかww」「だからあの人はあんな反応を...」「こんな他愛のない描写まで!?」
と、思わず声を上げてしまいそうになるあの結末は一見の価値アリです!

そんなわけで今回は「時計館の殺人」を紹介させていただいたわけですが、他の「~館の殺人シリーズ」だってもちろんおすすめです。

クライマックスのびっくり仰天っぷりが群を抜いている「十角館の殺人」
最後の最後にぞっと悪寒を感じる「水車館の殺人」
小説内小説という形式を巧みに利用した「迷路館の殺人」
館シリーズの中でも最も異色といわれる「人形館の殺人」
老人の手記をもとに過去の事件を追う「黒猫館の殺人」
原稿二六〇〇枚を超える、小説四作分の超大作「暗黒館の殺人」
ミステリーというよりもホラーに重点をおいた「びっくり館の殺人」

こんな具合で、館シリーズだけでもこれほどのバリエーションがあります。
そんな中でも特にミステリーの醍醐味であるトリックの爽快感を味わいたい方は時計館の扉をたたいてみては?

静かに時を刻み続ける時計と、不気味な住人があなたの来訪を待っていますよ...。

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Author:グリグリP

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Pとこの一冊 第10回 お姉ちゃんP「廃墟建築士/三崎亜記」

初めましての方は初めまして。
ご存知のかたはこんにちは。
1107Pのお姉ちゃんPと申します。
普段は主にノベマスを作り、たまにPVなんかも作っております。

私がおすすめしたい本はこちら。
三崎亜記「廃墟建築士」です。

No10 お姉ちゃんP用


内容は短編小説四篇なのですが、私はこの本のあらすじをばっさりと説明できるほどの日本語力を持っていません。
あらすじをそのまま書くのは簡単です。しかし「お前は何を言っているんだ?」と聞き返される可能性がとても高いです。
それでも書かなきゃダメなものでしょうか。いやダメですか、そうですか。
じゃあ、とりあえず二編だけあらすじを書きますよ。

・七階闘争
 →建物の七階で起こる事件を無くす為に七階を無くそうとする行政と、それに立ち向かう人たち。
・廃墟建築士
 →国の文化的遺産である廃墟を建築する建築士と、人が住んでいる「偽装廃墟問題」の行く先。

という感じで、「いまなんて?」と聞き返したくなるストーリーです。
はっきり言ってしまえばすべて「ファンタジー」であると切り捨てることができます。
しかし、よくよく考えてみれば実際にないことではない、と考えることもできる。
設定を前提条件としてどの程度受け入れ、どの程度噛み砕いて理解するのか。
これを笑ってもいいし、深い人間ドラマであると受け取ってもいい。

この作家はあまり有名ではありませんがこういう作品を多数書いていて、
「定められたルールに則った上でバスジャックをする」
「ゴーストタウンの中で歩道を歩道として定義づけるために道を歩く歩行技師が存在する」
「赤道上に発生した鼓笛隊は次第に勢力を弱めながらマーチングバンドへと転じる」
「となり町との戦争のお知らせ」
などなど一文抜き出して聞くと全く意味がわからない、そして通して読んだ上でも全く意味がわからない「存在」が多数あります。
分かるのはその物語自体はフィクションであること、それだけであり、こちらがどうするかというのはまた別の問題。

ただこの作家の作風には個人的に好きであると思う点が二つ存在します。
まずひとつ、
「仮に題材を入れ換えたとしても話として出来上がっていること」
これは小説として形作ることとしての宿命ではありますが、とくに二次創作を扱っている場合は、
案外問題にしている方が多いのは、「このキャラでやる意味がない」であるとかそういう問題。
自分としてはキャラクターは入れ物で、それは入れ替えても成立できる。
誰にでも起こるときにはそういったことが起こる、といった認識を持っていて、
必ずしも絶対この人でないと解決できない、ということはありえないはずです。
というより、そういう考え方を持ってしまうと人生が辛くなります。
自分じゃできない事があまりにも増えすぎます。
方法論であったり、運命であったり、そういったことを綴るために絶対はないのです。
スポーツマンガであっても、必ずしも「テニスでないと」「バスケでないと」起こり得ない、という筋はないはず、なのです。
だから、逆説的に、「話としての価値」がある。

ふたつめに、
「既存の存在に対して違う定義付けをする試みを行うこと」
これは哲学的な問いではありますが、常に我々が意識し続けないといけないことでもあります。
たとえば我々は推理小説を書くとして、人をナイフで刺して殺しました、と書いたところで、
そこに問いが発生することはありません。
冷凍ブロッコリーでぶん殴って殺しました、と書くと一斉に何があったのかと。
緑色のモサモサしたやつが飛び散りやしないかと。
カリフラワーではいけなかったのかと。
あんな柔らかいもので殺せるのかと。
犯人はシェフかと。
確認したいことが山のように出来ますし、書く側としてもそれだけ思いつけば山ほど埋めることができます。
あるいは、そもそも殴って殺したのではないのかもしれません。
冷凍ブロッコリーを喉に詰めて殺しました、とすれば、
起きているときに詰められたのか寝ているときに詰められたのかと。
普通食べるときに気づかないかと。
ネタはいくらでも出てきます。
どれもこれも出発点は、「ブロッコリーは普通殺害に使わないから」です。
当たり前のことを言っていますが、当たり前のことこそ一度立ち止まって考えてみる、
ということが必要なことであり、小ボケにも通じ、細かいディテールを表すのにも通じ、
更には作品全体のテーマにも通じる万能な思考だと思っています。
(なんだったら、私のようにP名にも使えるかもしれません)

さて、めちゃめちゃ長くなってしまいましたが、「廃墟建築士」、今大変買いやすくなっております。
昨年9月に集英社により文庫化されたからです。
普段小説を読み慣れている方は、まぁ短篇集ですから小ボケを見ると思って。
読み慣れていない方も、この作家独特の「これはこういうことです、どうぞ受け取ってください」と
言われてなんとなく受け取って一篇読んじゃうふわふわ感に浸ると思って。
読んでみると楽しいのではないかと思います。
乱筆ながら、お付き合いありがとうございました。

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Author:お姉ちゃんP

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Pとこの一冊 第8回 覆面作家P「ファミリーポートレイト/桜庭一樹」

 はじめまして。覆面作家と申します。ノベマスなんかを作ったりしています。
 私は以前、北村薫原作の『覆面作家は二人いる』シリーズをノベマスにしておりました。今回も北村薫の作品にしようかとも思いましたが、こちらにします。

No8 覆面作家P用


『ファミリーポートレイト』
 作:桜庭一樹 
 講談社

 私といえば桜庭一樹、とノベマスPの中では有名ですが、今回はこの作品を選びました。桜庭一樹の中で一番好きな本です。近くでサイン会があると聞いて、いやっほうとスキップしながら列に並んだくらい好きです。

 桜庭一樹の作品は、表紙のイラストで追っていました。初期の『赤×ピンク』は高橋しんが表紙のイラストを描いていて、『GOSICK』は武田日向。『推定少女』は高野音彦がイラストです。あ、どれもラノベ版の話ですよ。
 そういえば『愚者のエンドロール』も、角川ミステリー文庫版は高野音彦がイラストを描いていまして、どうにかゲットしたかった私は市内中の本屋を探し回った覚えがあります。
 閑話休題。そんな桜庭一樹が直木賞受賞後、初めて出版した作品です。
 
 本書は二部構成になっています。
 一部は、マコとコマコの話。5歳のコマコはママのマコに連れられて、山のふもとの町、海沿いの町、荒野の中の町。住処を変えながらマコは逃げ続け、コマコは犬みたいにマコに引き連れられ、ついていきます。コマコが14歳になったとき、マコはコマコの目の前から消えて、逃避行は終わります。
 二部はコマコのそれからの話。マコの幻影を背負いつつ、高校に行って、編集者と出会い、小説家になって、家族を持つまでのお話です。
 ふらふらした、つかみどころのない作品です。それでも私がこの本を好きなのは、これが作家と読者を描いた物語だからです。
 コマコが逃避行の中で本と出会い、魔法使いの話にわくわくして、むさぼるように本を読みます。本を読み続けたコマコは内に溜まった物語を、自分の物語を話します。そのとき、コマコは作家になりました。このコマコが自分の物語を爆発させる瞬間が、たまらなく好きなのです。
 
 物語を作ることは、自分の中の思いとか体験したこととか読んだ本とか、そういうのをまぜこぜにして外に吐き出すこと。ノベマスを書いたりして実感したことです。溜め込んで溜め込んで、一気に爆発させることで表現したその瞬間が、とても美しいと私は感じました。

 物語を書くこと、作家であることはもちろん苦しみを伴うものです。それでも物語を書き続けるコマコ。何かを表現することは苦しいことで、それでもやめられない。もしかしたら、ニコマスのPの中にもそんな人がいるんじゃないでしょうか。この作品は母と娘の物語であると同時に、すべての物語への礼賛なんだと思います。

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Author:覆面作家P

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Pとこの一冊 第7回 黄兎図画工作「こうかん日記で魔法をかけて/末吉暁子」

初めましての方もそうでない方もこんにちは。
黄兎図画工作と申します。ニコマス辺りでは手描き作品やニコ生をやっております。

私は小さい頃から本を読むのが好きで、小学生の頃は、学校の図書館で、
『 朝本を借りて夕方返却し、夕方また本を借りで帰る 』
ということをよくやっておりました。
1人1冊しか本を借りることが出来なかったとはいえ、
「どんな子供だよ!」
と自ら突っ込みを入れたくなります。

そんな技を使いつつ、年間図書貸し出し数上位に大体入っていたわけですが、
その私が、毎年必ず数回は借りる好きな本がありました。


No7 黄兎用


『こうかん日記で魔法をかけて』
作・末吉暁子


当時から既に20年程は経過しているわけですが、本のタイトルも内容も覚えている、
というのは本当に好きだったんだなぁ~、と自分で思ってしまいます。


小学生~中学生の女子であれば、一度はやったことがあると思う「交換日記」。
いつの間にか誰かが始めて、いつの間にか、秘かに流行している。
急に仲良くなったと思ったら、交換日記を始めたらしい、ということも
あったのではないかと思います。

そんな私ももちろん交換日記をやっていたわけで、定番の「好きな男の子の話」から、
勉強や友達の話、くだらないものでいえば、「魔方陣グルグル」のリレー小説を
友達と3人で書いていたこともありました。

交換日記の内容は秘密厳守、誰と誰がやっているというのも秘密。
ちょっとした秘密が大好きな女の子たちが飛びつかないはずはないですよね。
いや~・・・これが元で友情が失われたという話も良く聞いたので、
なんとも女の友情というモノは難しいです。


この物語に出てくるのも2人の女の子。
みき と ノンノ。 

みきは自分のことを「みきちゃん」、茶化して「ワラヒ」と言っちゃう女の子。
そんなみきが拝み倒して交換日記をお願いしたのが、友達のノンノ。
ノンノは既に他の人と交換日記を2冊もやっている人気者なのです。

そんな2人が交換日記を始めるのですが、言い出したみきが交換日記のノートを
用意し忘れちゃう!
何としても用意しなければならないけれど、時間は夜の9時を過ぎている。
厳しいお母さんから「そろそろ寝なさい!」と言われる頃合。
自分の机をひっくり返して探していた時に見つけたのが、1冊の大学ノートでした。

そしてその大学ノートで交換日記を始めるのですが、
実は書いた願いが叶ってしまう、魔法のノートだったのです。



書いたことが叶ってしまう魔法のノート。
小学生の私には夢のような話!特に友達と交換日記をやっている中で、
あぁ、自分のこのノートも魔法のノートだったらいいのに!
そう何度思ったことでしょうか!(笑)

この2人も魔法のノートとわかってからは、欲しい漫画やおもちゃ、
鼻炎が治りますように、足のいぼがとれますように(!?)なんていう、
何とも女の子らしい現実と夢が混ざったようなお願い事をノートに
書いてしまうのですね。
こういうところが夢を見そうで現実的な女の子を描写しているなぁ~
なんて、今読み返すと非常に思います。(笑)
「交換日記の数=人気のバロメーター」なんていうところも現実的ですよね。



小学生の頃の私も魔法のノートに書くお願い事をあれこれ想像していたと
思いますが、きっと2人ののような感じになるんだろうな~と思います。
欲しいマンガ、本、洋服、ゲーム、CDなどなどなど・・・
好きな男の子と両想いになりますように!>< なんていう、
なんとも甘酸っぱいお願いごとも考えたかもしれませんね///

今は大人になって、交換日記に書いてしまうような「物」は、
気軽に買えてしまうものになってしまいました。
あぁ~、大人なんだなぁ~と感慨深くなると同時に、ちょっと淋しくも
あったりします。手が届きそうで、届かない、そんなもどかしい
ちょっとしたお願い事は自分にあるのかなぁ~、なんて。


え?じゃあ、考えてみて欲しい?


今、もし手にその『魔法のノート』があったなら?


大金持ちにして!超能力者になりたい!タイムマシンが欲しい!
な~んていう、到底無理なお願い事は叶えられないノート、
みたいなのですけれど・・・

そうだなぁ・・・。

・・・ちょっとニコニコ動画に投稿したニコマス動画を数万再生にして、
毎時ランキングに載ったりとかしちゃったりとかして、
コミュニティレベルをばーん!とあげてもらっちゃったりとかしてもらう、
な~んてことはどうでしょう?きっと、簡単ですよね?(にっこり)

私の周りがそんな風に激変したら、きっと私が魔法のノートを手に入れた証拠。


じゃあ、あなたがもし、そんな魔法のノートを手に入れたら・・・

いったいどんなお願い事を書きますか?

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Author:黄兎図画工作

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Pとこの一冊 第2回 真人間P「箱男/安部公房」

これを御覧の皆に、質問がある。

過去に、段ボール箱、またはそれに準ずる「箱」に入ってみたり被ったりした経験はあるだろうか。
また、箱に入ったまま、一日を過ごしたことはあるだろうか。

今回は「箱」を被ったまま生きる、匿名性の塊と言っても過言ではない存在である「箱男」について語らせてもらう。
これを読んだ方が、この作品に少しでも興味を持っていただけたのならこれに勝る喜びはない。
前置きはこのくらいにして、簡単な説明からしていこうと思う。

No2 真人間P用


「箱男」とは、安部公房氏の作品の一つだ。
「箱男」の世界では、“箱男”という存在が認知されている。いや、正確には認知されてはいない。
この世界の人間は箱を被ることで、世俗から切り離された“箱男”という匿名的存在になることができる。“箱男”になる事で、名前も職もその他一切のしがらみを全て捨て去ることができるのだ。
彼らを街で見かける事があるかもしれない。しかし、世間は彼らを認知しない。認知する必要がないからだ。
箱を被り、覗き穴を空け、歩く。誰も彼を認知しない。世間の人達は覗かれてもなんとも思わない。だが“箱男”は覗く。段ボール箱1枚を隔てるだけで、一方的に覗く側に立てるのだ。
彼らと安部公房にとって、“帰属”を最大限まで突き詰めた結果が存在証明を捨て、不在証明を手に入れることだったのだ。

『人は自由な参加の機会を求め、永遠の不在証明を夢みるのだ。そこで、ダンボールの箱にもぐり込む者が現われたりする。』


これで“箱男”の存在について理解して頂けたと思う。
「箱男」の世界観についても。

この「箱男」という作品は、安部公房の“冒険”が見られる。その一つに、“読者にとっての小説への参加”が挙げられるだろう。
「箱男」は、バラバラに記憶・記録されたものを勝手に、何度でも積み変えてもらうような設計になっているのだ。
私が初めてこの作品を読んだ時、すぐに気付いた。ただでさえ作品に引き込まれるような工夫が多数なされているというのに、安部公房は「小説への引き込み」を「小説への巻き込み」へと昇華させたのだ。
私には、安部公房が恐ろしく思えてならない。間違いなく、天才である。

「小説への巻き込み」を匂わせる要素の一つに、情報の視覚化―写真があることについて触れておかねばなるまい。
「箱男」では、主人公が自ら写真を撮るシーンがある。一度目の写真挿入の後にそのシーンはあるのだが、「《表紙裏に添付された証拠写真についての二、三の補足》」と銘打たれたその説明文を読む限りでは、どうも挿入される写真と条件が合わないのだ。
つまりこの挿入された写真は、主人公本人が撮ったものかどうかが判断できないような演出の下で、『意図的に』使用されていると考えることが出来る。
そしてその写真の下に書かれた、詩のような文章。物語の進行には然程関係はないのだが、何か意味を見出そうとするような雰囲気があるのだ。
こういった詩的で思わせ振りな表現が、写真にも並列して行えるということを意識させる働きは無いとは言えない。

つまり、写真自体が文章から独立した、ある種の情報を提示するメディアとして働いているのである。
主人公本人が撮った写真かどうかは明確でないが、客観的立場にある“写真”が介在することによって、物語の現実味は更に増す。
「誰が撮ったか」の前に、この写真が物語世界の現実を写しているものであると読者は前提的に容認してしまう。
ここにも、より身近で直接的になった日常の視覚メディアの特性が巧みに利用されていることが分かる。

『“見る”ことには愛があるが、“見られる”ことには憎悪がある。』


私はこの作品が大好きだ。物語に引き込まれることは数あれど、巻き込まれたのは後にも先にもこれだけだ。「箱男」は、私という読者を、小説の参加者へと引き上げてくれたのだ。内容もさることながら、その技法に私はただただ舌を巻くことしかできない。
ただの「箱」の広がりを知るには、この作品におまかせあれ。是非とも書店で手に取ってもらいたい。
私の拙文にお付き合い頂き、本当に嬉しく思う。それでは、また機会があれば文章の上でお会いしよう。その時は「箱男」と安部公房について語り合うことができたら、と思うばかりだ。

『じっさい箱というやつは、見掛けはまったく単純なただの直方体にすぎないが、いったん内側から眺めると、百の知恵の輪をつなぎ合わせたような迷路なのだ。もがけば、もがくほど、箱は体から生え出たもう一枚の外皮のように、その迷路に新しい節をつくって、ますます中の仕組みをもつれさせてしまう。』

new_No2 真人間P用2

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Author:真人間P

真人間Pの妄想(公開マイリスト): http://www.nicovideo.jp/mylist/36421479

Twitter @HonestManP

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プロフィール

真人間P

Author:真人間P
「Pとこの一冊」寄稿者募集中
開催期間 4/19~5/25
詳しくは、「寄稿について」参照。

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